(堀田秀吾 著/文響社/2017年)
忙しすぎて、心も体もとっても疲れているときに、藁にもすがる想いで手に取った本。それをまた、読み返す時が来た。
明治大学の教授である著者が、次の条件を満たした「元気になれる方法」を紹介している。
▶2017年現在、世界の科学論文などで紹介されている科学的根拠(エビデンス)のあるノウハウ
▶誰でも、どんな環境でも実践できる簡単なもの
ちまたにゴロゴロ転がっている出どころ不明の眉唾ものではなく、ちゃんとした根拠のある方法。その事実だけで、なんかもう、読めば元気になれそうな気がしてくるのだから、不思議だ。
どんなことが書いてあるかというと。目次を見てみよう。
1 まず習慣にしてみてほしい 元気のスイッチ5つ
2 パフォーマンスとテンションを高める習慣
3 元気を出すために「やってはいけない!」習慣
4 心を平静に整えてくれる習慣
5 最高のスタートを切るために 朝一番に試したい習慣
6 幸福感を高めてくれる習慣
この中で、今、この時期にみんなが特に知りたいのは、4と6なのではないだろうか。
例えば。
ざらざらとした気持ちを切り替えるには、「青空を見上げること」。
え?そんな簡単なこと?しかも、何の根拠もなさそう!と思うけれど。
・晴れている空の色そのものが、色彩学では「神経を落ち着かせる色」である
・上を見上げて胸を張る姿勢は、ストレスに対する抵抗力を高める
ざっくり、以上の2つの理由から、青空を見上げることは、気持ちを切り替えるのに適した行動だと言えるらしい。
例えば。
疲れているのになんだか眠れない!というときは、「ひと息20秒ほどの深呼吸をして、脳に『休んでいい』という指令を送る」。
あれやこれやと考え過ぎて、頭がさえて眠れない…。それは、ストレスが自律神経を狂わせているから。ストレスをすぐに取り去ることは難しいけれど、神経を整える習慣を身につけことは、すぐにでもできる。
深呼吸が緊張やストレスの軽減に有効だということを示す実験は枚挙にいとまがない。
東洋大学医学部の研究では、被験者に1分間に3~4回のペースで深呼吸をしてもらったところ、リラックスしていることを示すα派が増加し、感情をつかさどる大脳皮質の活動が弱まる兆候が見られたのだそう。
ゆっくり息を吸い、できるだけゆっくり空気を全て出し切るイメージで、20秒ほどかけて吐いてみる。呼吸に意識を向けることで、あれやこれや、考えなくてもいいことを忘れることができるというのも、脳にとっては良いみたい。
また、私がこの本を読んでまっさきに取り入れたのが、「やる気スイッチ」の入れ方。その方法は、「とにかく何でもいいから、やり始めること」。
人は「何かをするとき、まずは頭で考えてから、脳で指令を出して行動を起こしている」と考えられてきたが、心理学や脳科学の世界では、「行動してから考える」というのが常識になりつつあるのだとか。
だから、原稿を書かなくちゃいけないけど、やる気が出ない…というようなときでも、まずいきなり書き出さなくてもいいから、とりあえず取材メモを眺めて大事なところに線を引くとか、リードだけでも書いてみるとか、簡単なことでいいから「やり始める」。
そうすることで、だんだんとノッてきて、いつの間にか集中している状況にもっていくことができるのだ。これを知ってからは、「やる気がなくても、何かする」を心掛けて、何度か成功をおさめている。
ほかにも「働くモチベーションを保つには」「あともうひと頑張りしたいときには」「テンションが下がりそうなときには」など、さまざまなシチュエーションで手軽にできる元気の出し方が記されている。
動作、姿勢、呼吸の仕方、考え方などを、ほんのちょっと変えるだけで人間は意外と元気になれるんだな。人間って単純な生き物だなと、つくづく思った。
病は気からというけれど、マイナス側に落ちていこうと思えば、とことん落ちていける。手の施しようがなくなる前に、それを食い止めよう。自分にはその力がちゃんと備わっているのだから。