1st Album「strobo」発売記念

vaundyを、語る。

自粛期間の収穫と言えば、今まで知らなかった素晴らしいアーティストや音楽に出合えたこと。とりわけ、vaundy(バウンディ)を知ったことは、私にとって大きかった。


若干19歳で、38歳の大人を惚れ惚れさせる、完成された世界観と音楽センス。

 

彼は、2020年以降を背負って立つアーティストになるに違いない。そんなものすごい逸材だと確信している。


YouTubeに最初に楽曲をアップしたのが、2019年11月。それから半年あまりの間に10曲近くを世に送り出し、本日5月26日にファーストアルバム「strobo」をリリースした。


それを記念して、今回は、彼の何がすごさについて語りたいと思う。私が語彙力を失い、「マジ、すげぇ…」としか言葉が出ない、彼の才能をいくつか挙げてみよう。


▶同一人物のものとは思えない、多彩な楽曲

 

ときにクールなシティポップ、ときにアダルティなR&B、キャッチーなバンドサウンド、エモいバラード、ほっこりするカントリーテイスト、ダークなヒップホップなどなど、出す曲、出す曲、ぜんぶイメージが違う。


よくもまあ、こんなにバリエーション豊かに曲が作れるなと、びっくりしてしまう。

 

これらの楽曲が今回のアルバム「strobo」にギュッと収めされてはいるが、いい意味でまとまっていない。まるで、何組かのアーティストの楽曲を詰め込んだオムニバスアルバムのようなのだ。

 

私が彼の楽曲を最初に聴いたのは、テレビ東京のドラマ『捨ててよ、安達さん』のオープニング。

 

テーマソングの「Bye by me」を、聴いたそばからいいなと思い、YouTubeに他の曲を聴きにいったのだが、「え、これもvaundyなの?ほんとに?」と疑ってしまった。

 

しかも、どの曲も、ドラマや映画、アニメ作品など、主題歌に起用されてもおかしくないレベルのハイクオリティなものばかり。実際に、昨年末に曲を公開し始めたばかりなのに、すでに2曲がドラマのタイアップだからね。やばいよね。

 

こちらが、vaundyを最初に知った「Bye by me」。

 

こちらが、え、同じアーティストの曲?とびっくりした、「不可幸力」。


▶世界観を作り上げる、変幻自在な声色

 

さっき、ほかの曲を聴いて「え、これもvaundyなの?ほんとに?」と疑ったと書いたが、それはサウンドの多彩さだけじゃなく、歌声の違いも大きな要因。

 

「Bye by me」では、温かみのあるかわいらしい声で歌っていて、Aメロにいたっては、「ハスキーな女性シンガーなのかな?」と思ったくらい

 

でも、「東京フラッシュ」や「不可幸力」などでは、男っぽいダークな声。さらに、「怪獣の花唄」や「灯火」では、イケメン歌うまバンドマンみたいな爽やかで力強い声。

 

などなど、楽曲によって声がまるで別人のように聴こえるのだ。さらには、同じ楽曲の中でも、声色や声量を巧みに変えて変化をつけている。


並大抵の人にはできないのはもちろんだが、プロの歌手でもこんなに変幻自在な歌い方ができる人はそういないと思う。

 

楽曲の世界観にマッチした、そして世界観をより魅力的に見せる声の使い方。鍛錬を積み重ねないとできないことだし、自分の声のことをよく知っていないとできないことだし。

 

この人、きっと、モノマネをやらせても上手いんじゃないかなぁ。

クールな歌声の「東京フラッシュ」。

 

ファルセットも用いた、爽やかイケボな「灯火」(ドラマ「東京ラブストーリー」主題歌)。


▶シンガーの枠に収まらない、表現者としての可能性

 

声色を変幻自在に操れるだけで、世界観が伝わるかと言ったら、表現の世界はそんな簡単なものではない。彼には、声の魅力に加えて、さらに、表現者としての素質が備わっていると思う。

 

私が一番びっくりしたのは、「僕は今日も」という楽曲。


ほかの曲と比べると異色で、彼自身のパーソナルな部分が歌われた、じんわりと、でも熱く胸を打つような作品なのだけれど、歌唱力とはまた別の次元にある、その表現力にやられてしまった。

 

例えば、とつとつと語るように歌うAメロの、語尾の部分。低い音が出ないわけじゃないのに、あえて聴こえるか聴こえないかくらいのかすれた音しか出さないとか。

 

愁いを帯びた壮大なサビは、息を吸うブレスの音も効果的に聴かせて、エモーショナルな雰囲気を盛り上げるとか。

 

どこまで意識してやっているのかはわからないけど、末恐ろしい、表現者としての可能性を感じた。


彼が「歌だけじゃなく、役者とかいろんな表現をしていきたい」とどこかに書いていたのを見たことがあるのだが、できると思う。ってか、やってほしい。

こちらが、聴くたび心を奪われる「僕は今日も」。


▶アートワークを自らこなす、芸術センス

 

詞も曲も自分で書いて、さらにはアレンジも自分でやる。まぁ、そういうアーティストはわりといるかもしれない。

 

でも、ミュージックビデオとか、楽曲ごとのビジュアルとかまで、総合的にプロデュースする人(できる人)って、なかなかいないのではないだろうか。

 

そこそこ大御所になってきて、何もかも自分でやらなきゃ気が済まないみたいなワガママとかではなく、ちゃんと、できちゃうっていう。若干19歳でね。

 

どうやら彼は、現役大学生らしいんだけど、ウワサによると大学は美大だとか(ほんとかどうかは知らない)。

 

自分で描いた絵をミュージックビデオに使ったり、役者やダンサーを起用して楽曲に合ったミュージックビデオを撮ったり。

 

「私にとっては絵を描くことも、曲を書くことも同じ話」と言ってて、それは、一つの「作品」をトータルでプロデュースする才能ってことなんだろう。いいなぁ。一つくらい、才能分けてほしいよ…。

 

こちら、Twitterで公開されていた、彼自身の絵。すごくない?



▶19歳とは思えない、深く鋭い視点の歌詞

 

19歳って言ってるけど、年齢って記号でしかないんだなということを、彼の歌詞を見ていて実感する。そんじょそこらの大学生には書けない深さなんだよ。

 

たぶん彼の精神年齢は、実年齢の倍はいっていると思う。ちょうど彼の倍の年齢の私ですらすごいって思うんだから、倍じゃないな。3倍とかかな。

 

新しいアルバムには入っていないのだが、「pain」という楽曲は、歌い出しから強烈。

 

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人は子をなぜ産むのか 一世一代の博打のつもりか
ならば子を育てるのが親の務めか 維持費は数百数千万の金

 

誰かのために生きている人と 自分のために生きている人
「背負っている重さがお前とは違う」と 背負われている君が僕に言う

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あと、サウンドが爽快だから気が付きにくいけど、「刺さるわー」って思ったのが、「怪獣の花唄」のこの一節。

 

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落ちてく過去は鮮明で
見せたい未来は繊細で
すぎてく日々には鈍感な君へ

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「Bye by me」でも、ほのぼのした雰囲気のなかで、さらっとふと深いことを言っている。

 

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また遠く去った過去の日々に 名前をつけていたんでしょ

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普段、どういう視点で生きたら、こういうことを言葉にできるんだろうなぁ。


でも、そんな大人な視点を持つ彼が、Twitterで「学校の課題に追われている」とか「オンライン授業始まったが、グダリンディ 英語大変難しい」とか書いてるのを見ると、かわいいなって思う。なんかほっとしちゃう。

 

こちらが、ずしんとくる曲、「pain」。この曲、2番の歌詞もすごいんだわ。

 


 

とにかく、2020年以降の音楽業界は、vaundyと藤井風がいれば、順風満帆だ。

 

「ホンモノ」の若いこの2人が、「ニセモノ」の大人たちからいろんなものをかっさらっていくぜ。

 

あー、楽しみ。長生きしなきゃ。ありがとう、自粛期間。

 

※早速アルバムを聴き、やっぱりどの曲も主題歌級のクオリティだわ…と再認識。そうしたら、こういう作品の主題歌だったらいいかも!という得意の妄想癖が出てきてしまった。というわけで、それを文字に起こした「vaundy 主題歌妄想劇場」を明日アップします!