1st Album「HELP EVER HURT NEVER」発売記念

藤井風を、語る。

 

彼を知って、まだ1カ月。そう、ペーペー中のペーペーファンだけど、ドはまりしちゃって、寝ても覚めても、知れば知るほど、彼のことを「いい……」と思って過ごす、今日この頃。

 

彼とは、シンガーソングライター・藤井風のこと。2020年1月にsingle「何なんw」でデビューしたばかり。22歳の新星だ。

 

そんな藤井風が、本日5月20日(水)に、待望の1st Album「HELP EVER HURT NEVER」をリリース。それを記念して、勝手に彼のすごさを語ってみよう、いや、語らせてよ、というのが、今回の主旨。

 

とは言え、ドはまりしている人やモノに対する暑苦しいほどの想いを、冷静に言葉にするなんて、正直、至難の業だ。

 

でも、私もライターの端くれ。燃え滾るこの気持ちからなるべく離れ、できうる限り客観的に彼の魅力を見つめて、綴ってみたいと思う。頑張れ、自分。

 

藤井風とはどんな人なのか。それをひも解いてみたら、7つのキーワードが浮かび上がった。それを、1つずつ紹介しながら、彼の魅力を伝えたい。

 

※私のド浅い知識と、大いなる主観によって書かれたものです。悪しからず。


 

その前にまず、ざっと、彼のプロフィールを見てみよう。長くなるので、自分では書かない。こちらの公式WEBサイトにアクセスしてから、また戻ってきてほしい。

 

はい、彼の概要がわかったよね。では、本題に入ろう。

 

藤井風は、「〇〇〇〇〇である」。

彼を表す、7つのキーワードとは。


keyword 1
藤井風は、

「超絶技巧のPiano Man」である。

3歳でピアノを始めた風少年。学校が休みの日には、7~8時間もピアノに向かっていたのだとか。


そして彼は、小学校高学年の頃から、父の勧めによって、演奏している姿をYouTubeにアップし続けてきた。クラシック、ポップス、歌謡曲など、演奏ジャンルは幅広い。

 

そのなかで、プチバズりした動画があるという。それが、これだ。

 

『「千本桜」を中学生がピアノで弾いてみたら…』

 

一心不乱に、でも楽しそうに、速弾きをする少年。7年前だから、15歳くらいかな(かわいいな)。この演奏が当時「すごい」と話題になったのだとか。

 

完全に、ピアノとお友だちである。マブを通り越して、もはや、ブラザー。で、さらにすごいのは、これが耳コピによる演奏だということだ。おいおい、マジかよ。何をどうやったら、そんなことができるのよ。

 

7年前でこれだからさ。今がどんだけかって話よね。鍵盤の端から端までを、我が庭かのように自由に行き交うし、さらには、鍵盤を一切見ないで弾いたりするんだからね。庭で目をつぶって踊ってるみたいなんもんよ。


生配信のYouTubeライブでも、ラジオ番組の出演でも、その場でリクエストに応えて、どんな曲も即興でサラッと弾いてしまう。

 

『Piano Live Streaming』

 

もうね、ため息しか、出ないよね。

 

そういえば、ラジオで「ピアノの種類には、まったくこだわりがない」って言ってたっけ。「弘法筆を選ばず」とは、このことだ。

 


keyword 2
藤井風は、

「音楽の神のオートクチュール」である。

 

またまた、大げさな…と思うだろうか。いや、それが、そんなこともないんだな。

 

先ほど述べたピアノの技術はもちろんだけど、それ以外にも、凡人が地団駄踏んでうらやむ、神が与えしセンスや才能、身体的特徴が彼には山ほどある。

 

一つは、絶対音感。「日常の生活音がドレミで聴こえる」レベルなのだとか。その絶対音感によって、譜面を見ずとも、聴いただけの曲を弾くことができるのか。


(耳が良いからか、完全な独学にもかかわらず、英語がネイティブレベルの発音なのも、ほんとにすごい)

 

もう一つは、作曲&アレンジのセンス。YouTubeにはいろんな曲のカバーが上がっているのだが、原曲そのままというのはほとんどなくて、ほぼ彼自身が編曲をして、演奏されている。


それがまた、原曲の良さを残しつつも、まったく新しい、ステキな曲に生まれ変わっており、そのセンスに脱帽。

 

例えば、私が好きなものを挙げてみると。

『Taylor Swift “Wildest Dreams" but it’s 80’s ballad 』

 

テイラースウィフトの「Wildest Dreams」のカバーなのだが、80年代っぽいバラードに仕上げている。情感たっぷりで、とってもロマンチック。


ちなみに、原曲は、こんな感じ。

 

テイラーさんにはごめんだけど、私は断然、風バージョンが好きだ。

 

あと、こちらも当時プチバズりしたらしい、「アダルトちびまる子さん」。かの有名な♪ピーヒャラピーヒャラ パッパパラパ♪が、彼の手にかかると、こうなる。

 

友蔵亡き後感が、すごい。人生の機微に触れ、大人の階段を登ったまる子の姿が目に浮かぶようだ。


ちなみに、この曲のコメント欄には、リスナーが勝手に想像した「大人まる子」のショートストーリーがたくさん書かれていて、それを読むのも楽しい。

 

また、ピアノを弾くのに有利であろう長く美しい手指や、この後に言及する歌声や歌唱力なんかも、神が彼に与えしもの。

 

今の日本のいわゆる「アーティスト」と呼ばれる人たちの中で、まぁ歌が上手い部類に入る人って、次のいずれかに分けられるはず。

 

<1>歌は上手いが、曲も歌詞も残念

<2>歌は上手くて、サウンドもいい感じだけど、歌詞が残念

<3>歌は上手くて、歌詞も独特だけど、曲がイマイチ

<4>歌も、曲も、歌詞も素晴らしい

 

<4>に当てはまる人って、全体の3割いるかいないかじゃないかと、私は思っている。歌が下手な人はここからは除外しているから、全アーティストで考えたら、1割弱とか?

 

その1割弱に、藤井風は確実に含まれている。しかも、その中でもトップクラスだと思う。彼は、音楽の神のオートクチュールであると、私は信じて疑っていない。

 


▶keyword 3
藤井風は、

「思慮深き哲学者」である。

 

若干22歳だし、くるくるパーマだし、バリバリ岡山弁でゆるーく話すし。一見、軽そうに見えるのだけれど、いやいやいやいや。


軽いどころか、ずっしり重い。そこらの22歳を10人束ねても、この重さには敵わないだろうというくらい、彼は思慮深い人物だと思う。

 

それは、彼の書く歌詞やさまざまな発言から、感じ取ることができる。

 

Album発売前までに、4つのオリジナル曲を発表しているのだが、毎回律儀に、その曲にどんなメッセージが込められているのか、どんな意味を持つ曲なのかについての、解説動画をアップしていて。


それを見ると、どの曲も、テーマがすごく深いということがわかる。例えば、デビュー曲の「何なんw」について。

 

 

「この曲は誰しもの中に存在している、ハイヤーセルフを探そうとする歌です。ハイヤーセルフとは神様みたいなもんで、天使・ヒーローみたいな言い方でもいいと思います。

 

わしはハイヤーセルフが一人一人の内に存在していると信じてます。彼はエゴ、利己心、嫉妬とかそーゆー色んなネガティブな感覚と無縁の存在で、この曲の中で人生において正しい道に進むよう、彼はわしに説教したり、嘆願したりしてきます。」

 

ねぇ、ほんとにあなたは22歳なの?どう育ったら、その歳で「内なる自分と対話する」みたいな発想が生まれるの?

 

そしてまた、4作目の「キリがないから」について。

 

「過去、そして未来に執着せず、今に集中しましょ、みたいな。わしらの悪い習慣、悪い思い、悪い欲望をぶっ壊そうぜ。だってそーゆーのキリがないから、みたいな。」

 

ほんと、そうだよね…。22歳に教えられる、諭される、打ちのめされる38歳がここに…。


人生で初めて撮影した「何なんw」のミュージックビデオについては、こんな風に話していて。

 

「このMVは、不完全に完全。それって、人生みたい」

 

ひょえー!これほどまでに、自分なりの哲学を持ち合わせている人って、50歳を超えようが、60歳を超えようが、そういないと思うんだ。

 

ねぇ、君、出家でもしてたの?

 

また、この映像の中で、彼は「毎日、朝に瞑想をしている」とも語っている。内なる自分と対話する時間を習慣としている22歳。恐るべし。


▶keyword 4
藤井風は、

「ブレス遣いの達人」である

 

ハスキーがかった、個性的な声。その声の魅力をさらに引き立てる、圧倒的な歌唱力。

 

何を歌っても色気がダダ洩れしていて、ガスだったら警報機が鳴りっぱなし状態だと思うんだけど、この歌声の色気の正体は「息」なのだと思う。


音に載せる息の量を、絶妙にコントロールして歌っていて、それが彼の歌を魅力的に聴かせているのだと、私は分析している。

 

息の量を多めにしてささやくように歌ったり、少なくして力強く歌ったり。同じ音でも、まったく違う聴こえ方で表現することができる。

 

なかでも私がメロメロになっているのは、低音に息をたっぷり含ませて楽器のように響かせる歌い方。

 

例えば、「優しさ」のCメロ。

 

♪置き去りにした愛情を探しに帰って♪の部分。「て」から、下がりながらの低音フェイクに悶絶。
(2分20秒あたりからね)

 

こんなのやられたら、「好き…」ってなってしまうよ。

 

彼、いかにもなビブラートはほぼ使わないけど、音節の最後に入れる細かいフェイクとか、言葉の1音目に入れるしゃくりとか、1曲の中にそういう技がいっぱいつまっている。


彦摩呂風に言うならば、「歌唱技術のデパート」なのだ。しかしそれを、もしかしたら、本人はそこまで意識せずにやっちゃてるんじゃないかという感じもして、それが非常に恐ろしいのだけれど。

 

同じく、「優しさ」で言うと、♪ちっぽけで空っぽで 何にも持ってない 優しさに触れるたび 私は恥ずかしい♪の部分(1分17秒あたりから)。

 

「持ってない」の「なぁぁぁい」のフェイクとか、「優しさに」の歌い出しの「や」の前のしゃくり、とか。

 

……てかもう、どの部分もとにかく、すげぇ上手いとしか言いようがない。うーん、上手いっていうとなんか違うなぁ。「巧み」っていうか、何ていうか。

 

そして、ところどころにアクセントとしてセクシーな吐息や、強めの息の音を入れてたりしていて、それがまた、ずるい。彼は、息や声を効果的に、楽器のように使いこなすことができる稀有な歌い手だと思う。

 

あとね、ラップも歌えちゃうんだよ。しかもピアノ弾きながらね。とんでもない人よ、ほんと。

『m-flo/come again 』


▶keyword 5
藤井風は、

「天性のストーリーテラー」である。

 

曲によって、彼の顔が全然違う感じに見えることがある。髪型とか年齢とかは関係なく、見るたびに「これさっきと同じ人?」という印象を受ける不思議な人だ。

 

それはきっと、曲ごとにその世界観に合った雰囲気を、自然とまとって表現しているからなのだと思う。

 

例えば、この2つの動画は、だいたい同じ時期に撮られたもの(約1年前)だけれど、醸し出す空気がまったく違う。

 

『Right There - Ariana Grande (cover) 』

 

『山崎まさよし/One more time, One more chance』

 

で、たまにこういうお茶目な小細工をして、世界観を作っちゃうのも、おもしろい。

 

『矢島美容室 / ニホンノミカタ-ネバダカラキマシタ』

 

一つ前で「息」を使った歌唱のことを書いたが、曲単位ではもちろんのこと、フレーズ単位、単語単位で声色や声量を巧みに変えて歌っており、それによって、見事に曲の世界観が作り上げられている。

 

まるで、ひとり芝居の主演俳優のよう。楽曲に対するリスペクトの気持ちも表れているんだろうなぁ。

 

ミュージックビデオでも、作品の中にスッと入り込む能力の高さがうかがえるし、彼は、菅田将暉もびっくりのカメレオン俳優だと思うのだ。


▶keyword 6
藤井風は、

「田舎者界の革命児」である

 

岡山県の自然豊かな町で育ち、上京してきてまだ1年ほど。一人称は「わし」で、千鳥の大悟とノブよりも強めのゴリゴリの岡山弁を話す。

 

私もそうだが、田舎者って、田舎者であることを隠したがる人が多いのではないだろうか(20代前半だと特にそうなんじゃないかな)。

 

しかし、そんな中で、彼のあっけらかんとした自然体の姿は、かなり清々しい。

 

そして彼のすごいところは、地元の言葉を、がっつり歌詞に使っているところだ。1st single「何なんw」、2nd single「もうええわ」にいたっては、タイトルにすらしてしまっている。

 


それは何なん 先がけてワシは言うたが 

それならば何なん 何で何も聞いてくれんかったん


その顔は何なん 花咲く町の角 誓った 

あの時の笑顔は何なん あの時の涙は何じゃったん 



 


もうええわ 付き合ってあげれんでごめんね 

もうええわ 自由になるわ 

泣くくらいじゃったら笑ったるわ



 

字面だけ見たら違和感ありありだし、歌詞に方言が入った曲って、得てしてコミックソングになりがちだけれど、何のおかしなところもなく、むしろ、とんでもなくかっこいい歌になっている。そのセンスに脱帽だ。

 

ラジオのインタビューで、彼は「歌のなかで嘘をつきたくない」と話していた。だからこそ、飾らない、自分の言葉で歌うことを選んだ。


結果として「何なんw」は、名刺代わりのデビュー曲として、申し分のないインパクトを与えた。彼には、セルフプロデュースの才能もあるのかもなぁ。

 

とにかく、彼は、私のなかで一番かっこいい田舎者。田舎者界を代表して、謝辞を贈りたい。


▶keyword 7
藤井風は、

「無邪気な色男」である

 

この場で初めて藤井風のことを知った人も、さすがにもうお気づきだろう。彼がめちゃくちゃ色男だということに。


イケメンっていうのとは、何かが違う。「イケメン」って、顔が整っていてそこそこスタイルが良いだけの男を指す気がするけれど、藤井風は、どう考えても、それとは一線を画すのである。

 

彼のYouTubeのコメント欄に、こんな書き込みを見つけた。


「なんか文豪みたいな顔しとるな」
「身分を隠したどこかの国の王子みたい」
「もう人生何周かしとる顔つき」

 

うんうん、どれも、すごくよくわかる。

 

身長181cm、ほりの深い顔立ち。そんな人はこの世界に星の数ほどいるだろう。しかし、彼のように匂い立つような色気を放つ男を、私は知らない。しかも、22歳という年齢で。

 

さまざまな才能や、思慮深さが、容姿以上に彼を魅力的に見せているのは間違いない。そして、最も大きなポイントだと思うのは、彼が己の魅力に対して無頓着である(執着していない)という点だ。

 

自分を良く見せようという気負いを、彼からは一切感じない。何万人もの人が見るYouTubeの生配信に、高校時代のジャージを着て登場してしまうのだから。

 

「自然体」をさらに超えた「無邪気さ」みたいなものが、彼の色気に他の人にはないフレーバーを加えて、さらにそこに薪までくべて、もくもくと彼を包んでいるように思う。

 

その嫌味のない色気は、女性だけでなく、男性をも惹きつける。YouTubeのコメント欄には「男だけど、抱かれたい」とか「カリスマ性がある」などと書かれている。

 

「カリスマ性」か。「尾崎豊っぽい」というコメントもあって、確かに…と思った。

 

特に、色気がやばいと話題なのが、この動画。白衣姿で歌う、椎名林檎「本能」。


「研修医のくせにお医者さんの若奥さんと浮気してそう」
「あれ、俺今エロ動画みてる?(錯覚)」
「性欲もピアノで満たしてそう」

 

などのコメントに、いちいちうなづいてしまう。


でも、こんなエロい男が、酒もタバコもやらない、さらには肉も食わない、超絶クリーンな人間だって、信じられる?

 

また、こちらの動画。椎名林檎「丸の内サディスティック」 。

 

コメント欄に「ピアノの下に全裸で縛った彼女がいそう」っていう書き込みがあって、めちゃくちゃ笑った。

 

わかる。せめて、それぐらいぶっ飛んだ性癖があるとかじゃないと、色んな意味でバランスがとれないよ。

 

この動画、膝にキーボードを載せていて、弾くたびにガッタガッタ揺れるんだけど、それに対して「震度7」というコメントがあって、それにも爆笑した。


センスの塊である藤井風は、そのファンまでセンスがいいっていうね。

 

それにしたって、芸能界は怖いところだ。こんな色男、誰も放っておくはずかない。


そんなことはないと信じたいが、どこぞの薄っぺらい女に騙されてしまわないことを、私はひたすら祈っている。

 

加えて言うと、今後、銭ゲバみたいな薄っぺらいプロデューサーにつかまってしまわないようにとも、心から祈っている。


さらには、ビジュアルだけで食いつく薄っぺらいファンが増えないことも、切に祈りたい。

 

だから、安易にテレビに出たりしないで。「関ジャム」で蔦谷好位置に紹介されたりしないで。

 

音楽の神様、どうか、彼をお守りください。お願いします。


つらつらと、本当につらつらとここまで書いてきて、つくづく彼は、「神様に依怙贔屓された男だな」と思う。


でも、そういう神様のいたずらで生まれたような天才が、われわれ凡人の日常を、人生を、豊かにしてくれるのだから、その存在に感謝。

 

まだまだ全然、永遠にでも、彼の魅力を挙げ連ねることはできるのだけれど、今回はこのへんにしておこう。なぜなら、そう、キリがないから。