BOOK 2

「世界はもっとほしいモノにあふれてる」

(NHK「世界はほしいモノにあふれてる」制作班 監修・協力/KADOKAWA/2020年)

わーい!「せかほし」の本が出たー!と、喜び勇んでポチっとした。
NHK総合で毎週木曜日22:30から放送している「世界はほしいモノにあふれてる」は、現在、私の中で好き度第1位のテレビ番組である。


雑貨や家具、服やアクセサリー、スイーツなどさまざまなジャンルのバイヤーの、海外への買い付けの様子を追うドキュメンタリー。
毎回、旅気分を味わえるだけでなく、とびきりセンスの良いバイヤーさんたちがセレクトするモノで目の保養ができるし、モノの背景にあるストーリーやヒストリーを知ることができる。


見ている間は、「ステキー!」「いいなぁ」「かわいい!」「ほしい!」「行きたい!」と、語彙力のないひとり言を連発。私にとって癒しの番組だ。

 

本書には、こちらの5つの旅を掲載。
「魅惑のモロッコ雑貨の旅」
「北欧ビンテージ家具を探す旅」
「本物のキレイを探す旅」
「メキシコ未知のスープの旅」
「日本未上陸、ローカルチョコレートの旅」


いずれも、過去に番組に登場したバイヤーの皆さんの買い付けの様子を掘り下げている。

 

と、ここまではすごく良さげな本のように思うのだけれど。ページを開いてすぐ、「ん?」ってなった。「この写真、画質が荒くない?ガビガビだよ…」「何か、文字文字してる…。文章多すぎるわ…」「この文章に出てくるモノの写真はないの?不親切だな」。


クレジットを確認すると、どうやら、どの旅もプロのカメラマンが撮ったものではなく、バイヤー本人もしくは同行者が撮った、言わば素人の写真を使っているようだ。マジかよ…。あの番組のステキな世界観は、ステキな映像ありきなのに。素人写真じゃあ、魅力がちっとも伝わらない。

 

どうしても取材に行けなかったんだとしたら、コンセプトを振り切って、バイヤーたちのInstagram旅行記みたいな体裁にすれば良かったのに。
表紙はまだ、小物の写真を切り抜いていくつも散りばめたデザインにしているからかわいいが、中のページ、結構ひどい。

見開きのうち、左ページをまるっと文章に、右ページをまるっと写真に充てている構成が多いんだけど、これ、写真がステキじゃなかったら、やっちゃいけないデザインでしょう。


読み捨てする雑誌ならわかるけど、手元に長く置いておくような書籍でこれは、ないなぁ。

買い付け旅行の様子も、文章で長々と書かれてしまっている。そうじゃなく、写真メインで、こういうモノをこういう視点で買ったよとか、これのここがステキとか、短い文章を添えるぐらいがちょうどいいと思う。


さらに言うなら、たとえば7泊8日のうち、この日はここに行き、この日はここへ…という感じで、視覚的にわかるように旅程表を載せるとか、1日のスケジュールのタイムテーブルを載せて、そっから印象的な出来事をピックアップして説明するとか…。
いくらでも工夫できると思うのだけれど。

 

バイヤーのインタビューも長すぎる。ダラダラ書くより、彼らのこれまでの人生ヒストリーを年表で見せて、大事な部分をフィーチャーするとかさぁ。そして、インタビュー中に出てくる、旅に欠かせない持ち物なんかは、写真で見せてほしいよ。ここも工夫次第で良いページになるはずなのに…。


編集の経験が乏しい人が作ってしまったのかな…。「せかほし」のブランドに傷が付きかねないクオリティ。

番組は何度も繰り返し見たくなるけど、こちらは一度パラパラ見たらもういいかな…という感じ。残念、無念…。